◆照屋勇賢  Teruya Yuken   モノに内在する意味を創造する

本企画展唯一無二のインスタレーション作家である照屋勇賢。

彼の作品は一見非常に奇異であり、そして美しくもあるが、 その作品の多くには社会問題と結びついたものが多い。

彼もまた911で衝撃を受けたアーティストであり、その作品のひとつに、多くの国の国旗デザインが一つの旗にひしめきあっているものがあるが、見るものを「あっ、なんじゃこりゃ!」と思わせることに長けた彼のセンスは、草薙にひとつオブジェをつくってもらえれば、間違いなく草薙すくえあの「なんじゃこりゃ」コーナーに取り上げられるに違いないほどだ。

注目は、紙袋の一部が切り取られて、その袋の内側に見事に木が立っている「告知−森」と言う作品。大量消費社会の申し子である紙袋も、もともとは森の木からできているのだという痛烈なアイロニーにも関わらず、紙袋に開けられたすきまから差し込む光と、その造形の緻密さに、それ自体どんな意味も付与しなくても、ただ美しい。

そんなわけで、ここまで語っておいてなんですが、本人のご希望もあり、あまり先入観なく見てもらい、いろんな人のいろんな価値観にさらしていく過程で、新しい価値が生まれていくことを楽しみたい。


◆ご本人と話して&展示を見て◆

照屋さんは、ユニークかつユーモアに富んだ親しみやすい方だった。
ご自身の作品についても気負わず、芸術家然としたところがなく、等身大で表現できる人だと感じた。

しかしながら、そういった人柄とは裏腹に、そのイマジネーションは常人を寄せ付けない飛びぬけたものがあり、今回の展示の中ではとくに「デザートプロジェクト」と名づけられた、パフェの造形に真骨頂を感じた。

それは、何重かに区切られたパフェの中に地層や火山、その外に海、そして空などが表現されており、それぞれ魚や飛行機、地上には街などがミニチュア的に見事に表現されている。しかも、それはすべて「おいしい」パフェだと言う。 なぜパフェなのか。 彼に何度か話を伺ったが、それはこれまでの人類のアカデミズムや権威などでできあがってきた地層的なものが、食べちゃえる、あるいはそれくらい危ういものというメタファーなのかもしれない。(と、話を伺ったにもかかわらず、「かもしれない」と弱気発言)

また、一際目を引いたのは、上でも紹介した「告知ー森」・・・木の机に無造作に置かれたファーストフード店などの紙袋の中に木が・・・なんだかアリスの世界。

ガラスケースも何もなく、イスにすわって触ってしまえる位置に置かれている。子どもが思わずつぶしてしまえそうなディスプレイ方法。 彼自身の作品を見る人に近づけたいと言う思いが、そのようなリスクのある展示方法を敢行させたのだろう。

<プロフィール> 学歴
2001 スクール・オブ・ビジュアルアーツMFA 終了
1999 メリーランドインスティチュート・カレッジ・オブ・アート、ポストバチュラープログラム終了
多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
受賞歴
2007 ジョアンミッチェルファンデーション奨学金
2006 ダイムラー・クライスラー・ファウンデーション・イン・ジャパン「アーティスト インレジデンス」賞
2005 NYFA 奨学金
2002 「VOCA 展2002」奨励賞 オールドリッチ現代美術館新人作家賞
2001 スコヒーゲンスカラシップ奨学生
主な個展
2007 「Yuken Teruya」Murata&Friend Gallery、ベルリン、ドイツ
「Free Fish >?:? The Art of Yuken Teruya」Asia Society、 ニューヨーク、アメリカ
「Yuken Teruya and 3D News」Shoshawayne Gallery、サンタモニカ、アメリカ
2006 「ストレート・フレーバー」展、広島市現代美術館、広島、日本
「照屋勇賢? 水に浮かぶ島」展、アサヒ・アートコラボレーション、すみだリバーサイドホールギャラリー、東京、日本
2005 「Yuken Teruya」Shoshanawayne Gallery、サンタモニカ、アメリカ
「Yuken Teruya」Josee Bienvenu Gallery、ニューヨーク、アメリカ
「Yuken Teruya」Kunstverein Wiesbaden、フランクフルト、ドイツ

<要チェック!WEBサイト>
+オフィシャル?サイト (作品・最新情報など)  http://yukenteruyastudio.com/
+Culture Power(岡部あおみさんによる論評やインタビュー) http://apm.musabi.ac.jp/imsc/cp/menu/artist/teruya_yuken/intro.html
+沖縄県立博物館 (ご本人の顔・略歴)  http://www.museums.pref.okinawa.jp/art/artists/other/teruya_yuken/index.html
+TAG BOAT (販売サイト)  http://em.m-out.com/ec/html/category/001/001/110/category110_0.html
+Shinya Watanabe氏の個人的なサイト   http://spikyart.org/anotherexpo/yukenteruyaintroductionj.htm
+ミクシィコミュ  http://mixi.jp/view_community.pl?id=1111264  62

「風景ルルル 〜私のソトガワとのかかわりかた〜」 アーティスト一覧

◆鈴木理策 Suzuki Risaku  自然の声が聞こえる写真 
◆ブライアン.アルフレッド Brian Alfred 911を通して覚醒した映像作家
◆内海聖史 Uchiumi Satoshi  果てしなく続く「色」の可能性との闘い
◆柳澤顕  Yanagisawa Akira  最善の方法、それはCGだった
◆高木紗恵子 Takagi Saeko 見たこともない美しい世界
◆小西真奈 Konishi Mana 途方もなく寂しくて、美しい
◆照屋勇賢  Teruya Yuken?モノに内在する意味を創造する
◆佐々木加奈子 Sasaki Kanako 過去の悲劇に関わり続ける勇気
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