◆佐々木加奈子 Sasaki Kanako 過去の悲劇に関わり続ける勇気
一見彼女の写真は現代的で、ポップカルチャー的要素も感じられ、かわいい女の子が必ずと言っていいくらいその写真の中でアクセントを効かせているため、おしゃれな若い女性が好みそうだと感じる。
だが・・・・
よくよく見てみると、なんだかちょっと違う。 美しくてポップさを感じることは間違いないが、どこか底知れない、陰が潜んでいる。
それに気づいたとしたら、あなたはもう戻れない世界に足を踏み入れてしまったことになる。
高校の頃従軍慰安婦問題で事実を報道が歪めたことに衝撃を受けた彼女は、アメリカでジャーナリズムを学び、それからはもっぱら過去の紛争や戦争と関わりのある国へと足を運び、そこで学んだことや感じたことを写真に収めている。
そして驚くべきことに、多くの写真に写っている女性は彼女自身のポートレートだと言う。 自分で全てセッティングした上で、最後のシャッターだけは他の人に頼む、そんな写真家がいたとは!!
とにもかくにも・・・・
彼女の写真にもし、なにか陰鬱なものを感じたなら、それは戦争への怒りと絶望、
そしてもし、それにも関わらず美しさを感じたなら、それは平和への強い祈りに違いない。
◆ご本人と話して&展示を見て◆
常に「死」を意識して、死ぬ練習をしているのだと言う佐々木加奈子さんの今回の写真展示は、どれも薄暗く、陰鬱な雰囲気がした。アンネをテーマにしたものも、「葉っぱになる」や「鳥になる」などのテーマに基づく写真も・・・どれも自身の死への道程をひたすら見据えているかのように、どこまでも哀しい。
そう、彼女の作品は、ぜんぜんポップではなかった。若い感性がそこに息づいているものを感じながらも、それはあまりに深刻で、ただ一人の女の子が倒れている美しい写真を、見つめ続け、立ち尽くすしかなくなる。
今回は暗室に入って見る映像作品があるのだが、それは床に映っていて、どこか遠い国の荒れ果てた線路から落ちているものを回収していく女の子の映像。 延々と続く映像に、まったく解説がないとさっぱりなんだかよくわからないのだが、これはアンネが落としていったモノを拾って言ってあげる映像なのだと言う。 ナチスの犠牲になった幼い命。きっといろんな夢や希望があったに違いない。そんな叶わなかった忘れ物を弔うかのような優しい作品なのだった。
ところで、ご本人はそうした多くの深くて哀しい作品とは裏腹に、とても話しやすく、楽しそうにしゃべる、一人の女性でした。どんな人とも対等に話し、好奇心に正直な、素敵な方でした。
<プロフィール>
1976年 宮城県生まれ
2004年 School of Visual Arts大学院写真映像学科修了(ニューヨーク、アメリカ)
2006年 文化庁新進芸術家海外留学制度 Royal Collage of Artに留学(ロンドン、イギリス)
個展
2005年 「“View from Here”ここからの眺め」(LightWork、ニューヨーク、アメリカ)
「Wanderlust」(アートコクーンギャラリー、東京)
2006年 「フセントワタと佐々木加奈子」(Coca Cola Gallery、ウィーン、オーストリア)
2007年 「Walking in the Jungle」(Liget Gallery、ブダペスト、ハンガリー)
2007年 「Walking in the Jungle」(MA2 Gallery、東京)
グループ展
2001年 WIPI Ju「Images of Women Images of Tea,」(ロサンジェルス、アメリカ)
2004年 『ひとつぼ展』(ガーディアン・ガーデン、東京)
2005年 「第3回平遥国際写真祭」(平遥、中国)
2006年 「Artist in Residence」( Kunstraum Palais Porcia、ウィーン、オーストリア)
2007年 「VOCA展」(上野の森美術館、東京)サイト・スペイシフィック・エキシビジョン「Someone else's house」(ロンドン、イギリス)
2008年 「第1回ニューヨーク写真祭」(ニューヨーク、アメリカ)
<要チェック!WEBサイト>
+オフィシャルサイト (作品・最新情報・ブログなど)
http://www.kanakosasaki.com/index.html
+Culture Power(岡部あおみさんによる論評やインタビュー)
+デジカメWATCH (個展レポート・作品・ご本人写真あり)
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/exib/2008/01/10/7711.html
+リクルート(「ウキヨーFloating World」展の情報と作品写真あり)
http://rcc.recruit.co.jp/gg/exhibition/gg_sec_ph_200806/gg_sec_ph_200806.html
+MA2 Gallery (Past Exhivision>佐々木加奈子) http://www.ma2gallery.com/
+HITS PAPER (MA2 Galleryでの個展レポート・作品写真あり)
http://antenna7.com/root/exhibition-walkinginjungle.html
「風景ルルル 〜私のソトガワとのかかわりかた〜」 アーティスト一覧
◆鈴木理策 Suzuki Risaku 自然の声が聞こえる写真