◆鈴木理策 Suzuki Risaku   自然の声が聞こえる写真 

「風景ルルル」展に来て、あまりに多様な風景のありかたに「なんじゃこりゃーー!??」と混乱している人がいるとするなら、そのパニックを沈静させてくれるのが鈴木氏の写真ではないだろうか。
それは、鈴木理策氏の写真が、本展示の中では、一番純粋に「風景」っぽい、と言うことのみならず、彼の写真には自然の中にある「美」を引き出す力を感じるからだ。
まるで彼は写真を通して、「静」と「動」の合間の究極の完全性を求めているかのようだ。
たとえば、仕事に疲れたA美さんが、休みに山の中を歩いていて、「ああ、都会の喧騒に比べて、山の中はなんて静かで落ち着いているのだろう」と感じたとすると、鈴木氏は「自然は落ち着いてなどいない。常に躍動し、生きているのだ!!」と言わんばかりにそれを写真で表現する。
A美さんは、「ああ! 私はなんて愚かだったの! そうよ、自然は生きているの。だから私に元気を与えてくれるんだわ!」と、思い直すだろう。
  しかし、一方でA美さんが油断して「だからあなたの写真はこうも動きにあふれているのね」と言うと「私はこの一瞬の完全さを写真に収めて、うつろい行く時間に抵抗しているのだ!!」と言わんばかりに、写真には、自然の一瞬の美が何の時間性もなく完成さに満ちている。
そして、彼の場合、場当たり的に撮るのではなく、「熊野」や「桜」など、過去のシリーズものからわかるように、自分で決めた題材をこよなく愛し、それを追求し続ける。
 あなたが鈴木ワールドにハマったなら、彼のたどった道を旅行しながら歩くのも楽しいだろう。


◆展示を見て◆

鮮烈だったのは、フレームいっぱいに真っ白い海を捉えた写真。

けれど、鈴木理策さんの写真は、一目見て感じる「キレイだな〜」と言う単純な感想がもったいないくらい、注意深く見ないと見落としてしまう「クセ」が発見できるものばかりでした。 

同じ海を、木々の隙間から撮る。次の写真はほとんど木で埋まって海がわずかしか見えない写真・・・
その一連の対比によって、おなじテーマ、同じ景色が「多角的に」表現されています。

そして、川のせせらぎを撮った写真は、コントラストがあまりに強くて、離れてみると岩肌が熱帯魚に見えるくらい挑戦的なものでした。 

何枚かの写真を並べて、ひとつの景色にややズレを生じさせながら表現する手法に、写真と言う時間を切り取る道具だからこそできる時間軸のずれを楽しんでいる作品たちに、鈴木氏の写真の本質への探究心を感じました。



<プロフィール> 1963年、和歌山県新宮市生まれ。
1987年、東京綜合写真専門学校研究科修了。
2000年、第25回木村伊兵衛写真賞受賞

<要チェック!WEBサイト> +東京都写真美術館での2007年展示関連PDF (紹介文など)  http://www.rekibun.or.jp/press/pdf/070809_suzuki.pdf#search='鈴木理策'
+Wikipedia (基礎情報のみ)  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E7%90%86%E7%AD%96
+東京と写真美術館 終わったイベント
 http://www.syabi.com/details/suzuki.html
+ミクシィコミュ
 http://mixi.jp/view_community.pl?id=42568 603

「風景ルルル 〜私のソトガワとのかかわりかた〜」 アーティスト一覧

◆鈴木理策 Suzuki Risaku  自然の声が聞こえる写真 
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