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取材に出かけた僕が偶然訪れた所は東光寺。
東光寺は、静鉄県立美術館駅から、並木通りを美術館に向かって歩き、2つめの信号(「東光寺」の看板がある)を右に曲がり、50mほどの所にある。
その東光寺の境内には、お洒落な石像がいくつかあった。
そしてその寺の隣にある民家の庭先において今回のキティちゃん石像を発見したのである。
僕は失礼とは思いながらもその庭までいきキティちゃん石像をまじまじと眺めていた。
すると、その民家の人と思われる方が、境内を通りこちらへやってきた。
「こんにちは、どうしましたか。」
「は、はいっ、実はかくかくしかじかで...」
僕は自分でも感心するくらいの好青年ぶりを発揮し、実直丁寧誠実にこのキティちゃん石像に関心があることを伝えた。
すると、その方は、ご親切に「ここの住職さんに聞けばいいね。」と住職を呼んできてくれた。
住職はすぐに現れ、その石像について教えてくれた。
キティちゃん石像は体長約40p、幅40p、奥行き50p。
その寺の取引先の石像屋の人がいつも石像を買ってくれるお礼としてプレゼントしてくれたものであった。
その石像屋は、安価に買い取れるという理由で、この像を中国福建省のある業者に注文し、買い取ったということである。
値段にしておよそ12万円相当の品であるらしい。
「中国出身であるなら、現地ではキティリー・チャンなどと呼ばれていたに違いない」
と僕は妙な確信を抱きながら聞いていた。
このキティちゃん像はプレゼントであり、寺の物ではないと前置きしながらも、これぞ住職、といった感じの優しく穏やかな口調で住職は次のように語ってくれた。
「子供の時から仏さんに親しみを覚えてくれることになればと思い、
新しい試みとしてここにおいているんだよ。」
話の終わり頃、ちょうどお孫さんらしき小学校低学年くらいの女の子二人が帰ってきて、「ただいまー」と住職の脚に抱きついてきた。
そして住職はその柔らかな表情をさらに優しくして女の子二人を迎えていた。
女の子達は次にキティちゃん石像になにやら挨拶らしきものをし、家へと帰っていった。
その光景には住職の想いについて言葉以上に納得させるものがあった。
女の子達はその石像を仏だとは思っていないだろうし、当然、住職の意図を知るはずもない。
しかし、石像に愛着を抱いているという今の現状は少なくとも何らかのカタチで住職の想いへとつながっていくことだろう。
取材を終え、帰ろうとすると住職は、「のど渇いてないかい。」とサンヨーブルーベリーDをくれた。
「神様、仏様、住職様だな」と僕は大満足のなか境内を後にした。
いつの間にか夏の気怠い暑さは、清涼感漂う心地良さにかわっていた。 |
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