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静岡県立図書館の裏の駐車場、その前を走る細い道路を挟んで樹木公園がある。
そこに鈴木梅太郎像は建っている。
鈴木梅太郎は農化学者であり、ビタミンB1の発見者である。
1910年、当時流行っていた脚気(かっけ)に効く成分を米ぬかから抽出し、「オリザニン」と命名した。
これはビタミンB1ならびにビタミン学の先駆をなすものであった。
しかし、当初国内では脚気の伝染病説が強かったため医学界に無視された。
そして、鈴木梅太郎の発見の一年後、ポーランドのC.Funkが同様の成分を発見し、発表した。
その結果、その成分はビタミンB1として世界に認知され、ビタミンB1の発見の名誉はC.Funkに与えられた。
結局、当時ノーベル賞ものだった鈴木梅太郎の発見は国内の認識不足のために、第一発見者として認められなかったのである。
しかし、鈴木梅太郎のこの発見は後になって評価されることとなり、その後、1943年、文化勲章を与えられ、同年、69歳で永眠することとなった。
鈴木梅太郎は静岡県榛原郡出身ということで、鈴木梅太郎像は昭和48年10月16日、生誕100周年とその功績を記念し、静岡県によって現在の場所に建てられた。
面白いのはこの像の建っている場所である。
率直にいうと非常にわかりにくい場所に建っているのである。
辺りの茂った木々に囲まれており、一見するとなにがあるのかわからない。
この像を少しでも知っている人達は次のように証言する。
「なんとなく不気味。」
「雨の時は発見できない。」
「幽霊かと思った。」
「挨拶してしまった。」
実は筆者も初めてこの像を見に行った時は一回では発見出来ず、
辺りを何度もうろつきようやく見つけるという経験をした。
鈴木梅太郎はオリザニンの発見に苦労したのであろうが、(当然それほどではないにしろ)まさか自分の像も発見に苦労されるとは夢にも思わなかっただろう。
興味のある方は是非一度見に行って欲しいものである。
発見した瞬間、かすかな満足感とひそかな一人笑いを味わえるだろう。
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