草薙駅の駅前商店街を南に歩いていくと、南幹線にぶつかる。南幹線を右に曲がり、2つめの信号(静岡市立清水有度西保育園の角。角に大きな看板あり)を左に曲がり、50mほど進むと左手に門が見える。このお寺が「鳳林寺」だ。
閑静な住宅街にある静かなお寺であるが、おとなりの保育園の子供たちの元気な声が聞こえてくる。
山門前には、六地蔵がおまつりされている。比較的新しいものだ。お地蔵様は口紅を付け、アイシャドーをしている、色っぽいお地蔵様だ。この六地蔵は、「美人地蔵」と呼ばれ、今は「縁結びの仏さま」としてお参りする若者もいるという。
山門は平成18年、使える材料はそのまま残し、腐ってしまった部材だけを新しくする修復工事をおこなった。
予算的には新しく建てても、そんなに変わらないそうだが、「昔の木材は品質が良いし、まだまだ使える。今、同じ品質の木材は欲しくても手に入らない。また彫刻の技術も良く、今同じ仕事が出来る職人はほとんどいない」という住職の考えで、あえて古い材料をそのまま使う工事をしているそうだ。
古い物を大切にする住職の心意気が感じられる。
山門をくぐると、すぐ左にドーム上の建物がある。これは「永代供養塔」といって、子供がいない等の理由で、お墓を守る人がいない方のための納骨堂なのだそうだ。
その先には、石で出来た大きな黒い玉がおまつりされていた。これは、戦争で亡くなった戦没者の慰霊塔なのだそうだ。以前、ここには英霊のための墓地があったが、風化のため取り壊し、供養塔を建てたのだそうだ。
境内には、2本の大木がそびえ立つ。1本はカヤの木で、もう1本はクスの木。カヤの木は、市緑条例の保存樹木に指定されている。
このお寺は、往古は真言宗であったという。真言宗としての創立は不詳であるが、曹洞宗に改宗したのは慶安年間(1648〜1651)といわれる。
元は現在地より北にあり「法林寺」と書いたが、火災のため移転し、「鳳輪寺」と改め、更に安永2年(1773)現在地に移転し「鳳林寺」と改称した。
それ以後、およそ230年間、改修工事は行っているが、本堂の骨組みは、当時のままであるという。
本堂には、本尊・延命地蔵菩薩の他、安産の霊験があるという「子育て弘法」、静岡の彫刻家、前島秀章氏の「弥勒菩薩像」などがお祀りされていた。
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