至福の3時間
第11回
七月も盛り、暑くなってまいりました。
そこで、少々皆様に涼を取って頂こう、
ということで今回はこの作品です。
とは言ってもホラーではありません。
実際に起こった珍妙な殺人事件にまつわる作品です。
ファーゴ
いきなりですが、総括した感想を言うと、
「極めて変で抜群に面白い映画」だと感じます。
時は1987年冬、場所は雪に覆われたノース・ダコタ州。
タイトルでもある静かな町、ファーゴを主な舞台にして、
世にも奇妙な事件が起こります。
自動車セールスマンのジェリー・ランダーガード。
多額の借金を負い、早急に大金を必要としている彼は、
自分の妻ジーンを偽装誘拐する計画を立てます。
ジーンの父親が自動車業界の大物であり、
非常に裕福である、という点を狙ったのです。
そこで、整備工場で働く元囚人から紹介してもらった、
カールとグリムスラッドに犯行を依頼をします。
しかしひょんなことからグリムスラッドが必要の無い殺人を犯し、
その事件がブレイナードの女性警察署長、マージを呼び、
やがて事態はジェリーの意図を遥かに外れて進んで行きます。
とまぁ、ストーリー(殆ど導入ですが)はこんな感じです。
なんとも行き当たりばったりな犯人や、
徐々に事件を追い詰めていくマージと、
必死に逃れようとするジェリー、
クライムサスペンスなのにとても人間臭さを感じます。
で、この後は更に不要な殺人が起きたり、
あるいはマージに少々胸の痛む展開もあるなど、
そう・・・非常に重苦しい展開になるのですが・・・。
この映画、コーエン兄弟が撮っているんですよね。
独特且つ秀逸な映像センス、実に巧みな組み立て能力を持つ二人。
ファーゴはその兄弟の最高傑作とも言われる作品です。
事実この映画は、カンヌ国際映画祭での最優秀監督賞、
アカデミー賞オリジナル脚本賞などを受賞してもいますし。
重苦しい殺人事件ばかりが連続し、
特に明るいジョークが多いわけでもない「ファーゴ」ですが、
見る人間はただ只管のめり込んでいくばかり。
気分が沈む暇など与えない、そんな雰囲気ばかり感じさせない。
雪の白さを皮肉なまでにコントラストに活かし、
あっけらかんと、しかもほぼ無計画に行われる犯行の描写と言い、
殺人事件そのものをくだらないと一蹴するように、
それでいてどこまでもスリリングに書き上げた脚本と言い・・・。
またスティーブ・ブシェミが凄く不気味で、
なんとも言えない味を出してるんですよね。
彼の人相を、目撃者がただひたすら「変な顔」、
と語るシーンには思わずニヤリとしてしまいました。
間違いなく・・・面白い!!
この映画、オススメです。
余談ですが、こんな稚拙な紹介でもコーエン兄弟に興味が湧いた方は、
最近ビデオリリースされた、
「オー!ブラザー」という作品をご覧になるといいですよ。
「ファーゴ」 1996年 米
監督 ジョエル・コーエン / イーサン・コーエン
出演 フランシス・マクドーマンド / スティーブ・ブシェーミ
ウィリアム・H・メイシー / ピーター・ストーメア
他
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