草アート
美の参道 彫刻プロムナード

 静かな緑のたたずまいの中、点在する数々の彫刻。
その美しく漂う芸術の空気の中、深呼吸をしながらゆっくり歩く。
そんなゆとりある時間をすごせる彫刻プロムナード。
 県立美術館へと続くこの道は、美術観賞の準備体操と整備体操として歩くもよし、リフレッシュのちょっと贅沢な散歩に使うも良し。
今まで「なんだろうこの変な物体は?」と横目で流していた人の為に、
ここで彫刻プロムナードに立ち並ぶ11体の彫刻(中には彫刻と呼ぶべきか迷うものもあるが)の紹介と解説をしよう。
これを読んであなたも気軽な芸術気分を満喫しに行こう!

 
中国の守り神の狛犬に迎えられ、さあ、彫刻プロムナードへ


アークU J・ロザティ 1982〜84年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁
青空のキャンパスに描かれた鋭さ
 まず、彫刻プロムナードの最初に僕達を向かえるのは丘の斜面に鋭く構えているアークU。
「アーク」とは「弓型の曲線」と言う意味。
ニューヨークで活躍していたロザティが手がけたこの作品は、3年に及んで制作され、1986年に清水港から上陸した。
その流れるようなスマートな形を見上げれば、背景となる青空とは全くもって異質なものであるが、その異質さこそがこの作品の醸し出す芸術なのではないだろうか。


県立美術館所蔵 無断転載厳禁
Q1 この作品の作者ロザティのかつての仕事は何だったでしょうか?
   A 大リーガー  B スーパーマン C バイオリニスト


答えは次の彫刻のクイズの下にあります。
Q10の答え どれでもない
 AとBは「アマリリス」だが、決まった形はない
 Cは美術館前にある別のもの

 

舟越 保武 1982年 


県立美術館所蔵 無断転載厳禁

胸を張る事の素晴らしさ
 少女の新鮮な生命力をみずみずしく表現したこの彫像からは、毅然としたティーンの誇りが伺える。
 一瞬オールヌードかと思うかもしれないが、良く見ると薄い布みたいなものをまとっている。
 昔の西洋画によくあるように片方の胸だけが見事に晒されているのは何故なのだろうか。
 現代具身彫刻家として、『長崎26聖人殉教者記念碑』などを手がけて来た舟越氏は、
 最初この作品をもっと動的にしたかったらしいく、この彫刻の足も最初随分開いていたが、
段々直立に近い形になって行ったらしい。実は上半身がやや傾斜しており、それによって、
「生硬な印象を避けている」らしい。


県立美術館所蔵 無断転載厳禁

Q2 この美しい少女の彫像が両手に持っているのは?
A アバンチュール  B あんず  C たまごっち


Q1の答え C 
 だから彼の作品にはどれも音楽的な響きがあると言われる

四角い柱と丸い石 山口 牧生 1985〜86年


県立美術館所蔵 無断転載厳禁

2つのなくてはならないもの
 ここを通る度に「この四角いのと丸いのは何か私には理解できない深い意味があるに違いない」と思った人は多いだろう。
なるほど、この黒御影に細かい彫り込みが入っているこの柔らかそうな触感の四角と丸は、一見とても単純なのではあるが、それだけに裏に何があるか気になる。
 実は、この傾きながら立っている四角柱と、大地に同化するかのようにたたずむ球は、それぞれ父と母、あるいは人間と自然と言った2つの相反するものを示していたのだ。
だが、その2つは決して対立せず、むしろ寄り添いながら、その場所を調和への祈りの場として今日も暖めている。

Q3 作者がこれを見る人々に望む事とは?
  A デートの際にこの石にキスをする  B 子供にこの石に戯れる  C 何もないかのように通りすぎる


Q2の答え B 
この彫刻に杏(あんず)を持たせる事で、微妙な均衡を保っていると言う。

地簪(ちかんざし) 清水九兵衛   1986年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁
ここはガリバーの国か、アリスの世界か。いや、静岡だ。
 この彫刻プロムナードで最も目立つ作品。
 しかし、これが実は簪(かんざし)である事を知っている者はどのくらいいるだろうか?
 これは美術館が開く直前にクレーンで空から降りて来たらしく、その最初から人々を驚かせた。
 作者は簪がつきささっている盛り土を盛り上がらせる事によって、「フォルムと土をなじませた」のだと言う。う〜む、インスパイアリー!

Q4 この作品の全長は?
  A 70cm  B 約2m22cm22mm22...  C 約5M


Q3の答え B
 子供たちが平和そうに、その四角柱にもたれたり、丸い石にまたがったりしていてほしいらしい。

蝶  掛井 五郎  1982年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁
蝶か人間か いや、蝶は人間だ
「天から地に降りて、羽根を休めている蝶の姿」をイメージ。それなのになぜ人間が彫られているのか!?
それは86才で亡くなった亜母の名前も「蝶」と言い、これは母への別離に向けられた親愛と敬意の象徴であるからだ。
これは、掛井五郎氏が大病を癒した後の最初の作品で、高村光太郎賞を受賞してもいる。

Q5 この作品は母の生命力を表現したものらしい。その母の生命力とはどんなものか?
  A 子供を10人産んだ  B 一度心臓が止まったが、また動き出した事がある
  C なんとなく生命力があるように感じた

Q4の答え C
  

涛の塔(なみのとう)  大澄 清澄  1985−86年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁

 見よ!そして聴け!人間生命の讃歌を!!
天を突くような銀の輝きが緑の環境にほとばしっている。
涛(なみ)とはこの世界の根源。「宇宙も、光も、電気も波からできている」と言う。
これは男性的な勇気・情熱・ロマンを象(かたど)っている。
人間の、そして作者自身の心の底から沸き上がってくるマグマを思いきりあらわしている。
「人間とは何か。自分とは何か」を追い求めて来た作者のひとつの集大成と言えよう。

Q6 この作品は何でできている?
  A ステンレス  B ガンダニウム合金  C 超合金 

Q5の答え  A

風化儀式V  鈴木 久雄  1986年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁

この芸術は、時と自然によって完成する
 鉄鋼を線連された石の山で包み、その周りを鉄のワイアーで縛った謎の多い作品。
実はこれが世紀をまたがった風化の儀式の前段階と知る人は少ない。
一見山の形をした無骨なアートに見えるこの作品は、そのワイヤーが錆びて弾け、石山が瓦解し、コケが生え、長い年月をかけ風化した時に始めて完成する。
自然との偉大なる融和だ。

Q7 この作品のこの山は何をイメージしているか?
  A 人生の山場  B 初恋の人「ヤマさん」   C 富士山
Q6の答え A

みどり 佐藤 忠良 1985年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁

ガイジンも羨む日本女子のプロポーション!
作者はフランスアカデミーの会員。
プロムナードの自然環境に即して,簡潔で張りのあるフォルムでこの「緑」を制作した。 日本人の身体の特徴を遺憾なく発揮した。
かと言って、「これが日本人女性の身体か!」と、ガイジンに理解されると問題が生じそうだ。
ともあれ、この像には「四季の移り変わりの中でいつまでも媚びる事なく静かに立っていて欲しい」と言う作者の優しい想いがこもっている。



県立美術館所蔵 無断転載厳禁


Q8 なぜこの像の名前を「みどり」と言うのか
  A 作者の子供がみどりと言う名前だから 
  B 作者の恋人がみどりと言う名前だから
  C 緑の中に立っているから

Q7の答え  C富士山

道標 鳩 柳原 義達 1986年

県立美術館所蔵 無断転載厳禁


 あなたは鳩が好きだろうか? 
 それとも嫌いだろうか?
 思えば、普段はもっとも日常的な鳥として何気なく見過ごしているが、もし鳩がこの世からいなくなってしまったら,とても寂しい気持ちになるだろう。
 鳩はいつも私たちと共にいた。作者はこう述べている。
 「鳩は、雨、風、嵐、喜び、悲しみの運命の中を生きている」そんな鳩は作者にとって厳しい人生の代弁者であり、この作品は作者自身の自画像であったのだ。

Q9 作者は鳩の何に注目してこれを創ったか?
   A 動きの変化とボリュームのひしめき
   B 斬新な尾の形容と不干渉
   C 数

Q8の答え C 緑の中に立っているから

アマリリス トニー・スミス 1986年

 ミニマルアートやスピリチュアルアートをリードしたトニー・スミスの作品。
 三つの直線を三角形と台形で形成する単純フォルムにも関わらず、見る方向によって全く見え方が変わる洗練された作品。

Q10 この作品の本当の形は次のうちどれでしょう。
   A    B    C  
県立美術館所蔵 無断転載厳禁     県立美術館所蔵 無断転載厳禁         県立美術館所蔵 無断転載厳禁 

Q9の答え A

Q10の答えはQ1の下にあります

さあ!ここで得た知識をもって、あの彫刻プロムナードへ!
一歩一歩踏みしめながら世界と命の貴重さに奮えるも良し、足取り軽く散歩のデザートにするも良し。
今なら見えなかったものが見えるはず。

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