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コラム 第4回 地域に根ざす巨大エンターテイメント
 

 なぜベッカムはこれほどまでに人気があるのか?  ハンサムでフットボール(イギリスで「サッカー」のこと)がうまくてタレントとしても活躍しているからか。それはそうだが、それ以前の理由がある。それはマスコミが彼を宣伝するからである。

 ベッカムがスペインのレアル・マドリードに去ったとは言え、イングランドフットボールは全世界から絶大な人気を得てその黄金時代のただ中にある。伝統、実力、雰囲気など多々要因はあるが、何と言ってもやはりテレビ中継のおかげなのである。

 さて、私が応援していた同じイングランドのウエストハムと言うチームは昨シーズントップリーグのプレミアリーグから降格し、財政危機とそれに伴う選手放出にあえいでいる。ウエストハムに限らず、一度プレミアリーグから降格したチームは同じ問題に直面する。なぜなら、プレミアリーグより下のリーグはほとんどテレビで放送されないからである。プレミアリーグのテレビ放映権はとんでもない金額で取り引きされており、ウエストハムの場合、降格により約40億円あったテレビ放映権がなくなってしまったのだ。

 このように、エンターテイメントにおいてテレビに映るか映らないかはまさに存亡を賭けた大問題である。

 だが・・・サッカーのようなエンターテイメントの場合、その一番の醍醐味はテレビ中継ではなく、スタジアムで生で観戦する事に変わりはない。

 その証拠にプレミアリーグの強豪トッテナムでさえ’01-‘02シーズンの総収入は約123億円だが、その中でもっとも高い割合なのが入場料収入なのである。チケット売れずしてプレミアリーグの存在はない。もっとも、スタジアムに足を運ぶ人がいないようなスポーツの視聴率がいいはずもないのだが。

 今でこそ世界の多くの人がスタジアムにかけつけるマンチェスター・ユナイテッドでさえ、昔は下のリーグであえいでいたこともあったのだ。そんな時、ずっとクラブを支えてきたのは地元のサポーターたちであって、そしてこれからもし再びマンチェスター・ユナイテッドが危機に陥ったとき、彼らを救ってくれるものがあるとすれば、やはり地元のサポーターであろう。

 私は、ウエストハムに住んでいないウエストハムのファンだ。一見何の脈略もないファンに思われるかもしれないが、私はロンドンに一年ほど留学したことがある。その時なんどもスタジアムに足を運んだものだ。地下鉄を降りたときから聞こえてくる応援歌。スタジアムの外はインド人街で、その独特の雰囲気と、最寄りの店で食べるフィッシュアンドチップス(イギリスの代表的なファーストフード)も最高だった。そしてスタジアムの熱気・・・。

私がロンドンに住んでいなかったら同じロンドンにあるウエストハムを応援する気にはなれなかっただろう。そして、私のようにテレビを通じて海外のクラブを応援する人々は、いつかその国のその地域へ行き、スタジアムで応援することを夢見ているのである。

どれだけメディアが進もうとも、フットボールはいつも地域と共にある。 

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