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 芸術作品を踏んでみたいなら今だ!

             〜県立美術館 特別展〜

      −ローマ散策展−現代日本絵画展−西洋風景画展−

   <本展は平成13年4月20日をもって終了いたしました.>

 「ローマ散策展」は17世紀のモノクロのローマを文字通り散策するような感じで観賞できる奇抜な作品展である。

  17世紀のイタリアを代表する版画家G.B.ピラネージ(1720〜78)を中心とするその作品の数々はまるで絵のようなローマの名所の数々を描き出している。それは美しくもあるが、歴史の現実を感じさせるような写実的なものである。

  一方で、異常に力強いタッチで描かれた「牢獄」シリーズは、ピラネージが病床に伏して気が狂った時に見た幻覚を題材にしているらしい。天才の気が狂うと何が見えるのか、この作品群には目に見える以上のものが隠されていそうだ。

 

  私は去年ロンドンにできた現代美術館「テート・モダン」にある、数多くの意味不明な現代美術に打ちのめされた覚えがあるが、その内奥に潜む意味への挑戦権をここ県立美術館の現代日本美術コーナーで再び得られる事に感謝せねばならない。

 大きな二つ繋げたキャンパスをただ黒で塗りつぶしただけのもの(桑山忠明 作)や、題名に「雨」としながらもその「雨」を描かないでただキャンパスにその定義を書くだけの作品、さらに床に正方形の鉛と亜鉛を交互に敷き詰めたカール・アンドレの作品は踏んで見ると何かがわかるらしい(私は結局分からなかったが)。

 実にはっとさせられるような遠大な視野からのものの見方がこのゾーンに詰まっている。流れ行く日常に頭が凝り固まってしまったと思ったら,ここでインスピレーションを。

  あまりにかけ離れた現代美術のコーナーに少し疲れたら、この西洋風景画の美しい景色に意識を漂わせよう。特にピサロ、コロー、ドラクロワ、ブラマンク、ゴーギャンなどの印象主義派以降の絵画は、堅苦しい考え方はおいておいて、ただその絵をボーっと眺めているだけで癒されていきそうだ。

 以上三つのコーナーに加え、美術館の目玉であるロダンの彫刻群を収めてあるロダンウイングを、たった300円の入場料で見て周ることができる。それぞれのコーナーは、ロダンウイングを除いて期限が決まっているから、早目にどうぞ!

自由に入り自由に見、自由に思う。

 県立美術館にはそのほとんどの作品展が無料で見られる学生には嬉しいコーナーがある。

 それが美術館1階の奥にある県民ギャラリーである。

 と言うわけで「無料」という言葉に弱い私はふらふらと足を伸ばしてみた。  

< 命をかけて富士を愛する魂〜山岳写真の会『白い峰』展 >

 私たちは富士のふもとにいながら、富士の美しさや偉大さをあまりわかっていないようだ。私などは3年間も静岡にいながら,特に冬に奇麗な富士を呆然と見て「いいなあ」と思うに過ぎなかった。

 だが、そんな富士を富士とも思っていなかった人も、この写真展へ少し足を踏み込むだけで,世にも素晴らしい富士の絶景に声を失ったであろう。あらゆる角度から富士を撮ったこの写真展は、私に富士ほど美しい山は世界中を見渡してもあるまい,と思わせる。

 この展示会を主催する山岳写真の会の会長である白旗史郎氏は、五年置きに朝日新聞社から富士山の写真集を出版している。もし富士山の美しさにもう一歩踏み込んでみたい人がいれば、この無料展示会を見逃した記念に一冊買ってみて損はあるまい。

 帰り際に展示会に入って行くどこかの中年夫婦とすれ違った。「彼等は命をかけて写真をとっとるんや」と、そのおじさんは奥さんに語っていた。それが本当かはわからないが、あのどこまでも美しい富士の写真を見ていると,あの写真を撮った人々は本当に富士を愛しているんだなあ,と実感できる。危険を犯してでも愛する人に会いたい、とでも語っているかのように。

 <注!> 県民ギャラリーの展示会は全て短期のものです。したがってここに揚げた展示会は既に終了しています。次回の展示会を楽しみにしながら、その他いろんな美の世界を散策しに足を伸ばしてみると、新しい価値が芽生えるかも



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